【大村 伸介】一年の計は四月にあり

この号が皆様のお手元に届くころには、入学式、始業式といったまさに1年の始まりの時期となります。先生方も生徒たちも希望に胸を膨らませていることと思います。そして、この時期になりますと、ある先生のお顔が浮かんできます。

数年前、とある私立高校にお邪魔した時のことです。

「今年の新入生のレベルの低さといったら…。おかげで入学定員は確保できたんですがね、もう態度がなってないんですよ。そもそも入学式の練習からしてそうでした。まだ入った初日ですよ、すでにおしゃべりでうるさいか、関心なさげにしているか…。先生たちも注意はするんですが、今一つピリッとしない状態でね、これではいかんと思いましてね、ガツンと言ってやったんですよ。

『なんだ、君たちのその態度は!そんなことをどうせ中学の間もやっていたんだろう!それでまた、同じことを高校に入っても続けるのか!3年後、大学にしても就職にしてもロクな結果が出ないぞ!』

さすがに驚いたのか、静かになりましたね。先生方も驚いていたようですけどね、終わってから職員室で先生方にも言ってやったんですよ。

『何事も初めが肝心ですよ!初日からこんなんでは、これからの生活指導に手を取られるのは目に見えている、しっかりやってくださいよ!』ってね」

確かにびっくりしたことでしょう。どんな経緯があったかは生徒各々違いますが、希望に胸を膨らませ、あるいは第一志望校ではなかったにせよ、様々な思いを込めて入学した新たな環境で、新たな3年間をスタートしようとする初日に、否定・恫喝・叱咤されたわけですから…。そして、その後、叱責された先生方も…。

 

人は扱った通りの存在として現れる

人とは、特に子どもとは、そういう生き物なのです。

できる子だとして関われば、できる子として現れてくるのに、ダメな子だとして関わると、ますますダメな子として現れてくる―そんなケースが少なくないのです。

教育コーチングでは、人間一人ひとりが、すべてのものを内在する存在と捉えています。やる気も怠け心も、優しさも意地悪さも、強さも弱さも、外向性も内向性も、主体性も依存心も、善も悪も、ありとあらゆる資質・能力を持っている一個の存在と考えています。そして、誰がどう関わるかで表出するものが変わってくるわけです。「扱った通りの存在として現れる」とはそういうことです。

こう考えると、教育は「教える・与える・させる」行為ではなくなります。目の前の相手が持っているよいものを「引き出す」行為だということです。福沢諭吉は『文明教育論』の中でこう述べています。学校は人に物を教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。教育の文字はなはだ穏当ならず、よろしくこれを発育と称すべきなり。

かくの如く学校の本旨はいわゆる教育にあらずして、能力の発育にあり。その方法論として教育コーチングやアクティブラーニング、PBLなどがあるわけです。

 

信念のトライアングル

教育コーチングには「信念のトライアングル」というものがあります。

「人は、育とうとする生き物だ」

「人は、自分の中に答えを持っている」

「人は、それぞれ(一人ひとりが独自の『個』である)」

この信念で目の前の相手を見て、関わります。当然相手は、育とうとする意欲と行動を示すようになります。自分の中にあった本当の答えやアイデアに気付きます。自己肯定感が高まり、自信が持てるようになります。引き出すスキルを持った人が引き出せば、人の能力・資質はどんどんと出てきます。逆に言えば、引き出さずに「教える・与える・させる」ことばかりするから出てこないということです。そればかりか防衛機制が働き、育とうとしなくなってしまうことも多く見受けられます。

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大村 伸介(おおむら しんすけ)

株式会社成基総研 コーチング室 室長


集団指導塾を経て、2004年株式会社成基入社。

教室長、エリアマネージャー、本部長補佐、副本部長を歴任。

現在は、教育コーチング、パパママコーチングセミナーのトップ講師として教職員研修、保護者講演会等で全国を飛び回る。

日本青少年育成協会認定上級教育コーチ・認定A級トレーナー、主任研究員。

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