【大村 伸介】あきらめの探究

3月から4月にかけて、各地で教育コーチングの研修で飛び回っておりました。もちろん新型コロナウイルス感染症対策を万全に期したうえで、様々な皆様との出会いがありました。

そんな中で、とある学校の先生がこんなことを仰っていました。

「うちの生徒達が素直にコーチングを受けるわけがないです。なんといっても行き場のない子どもたちの受け皿なんですから。なので、こんなメソッドが生徒に通用するわけがないと思います。何をしようが、うちの生徒達には私立中堅大学が限界ですしね。うちの学校の先生みんながそう思っていますし、もし学んだとしても実践するわけがないと思いますけど。」

すべてあきらめ以外のなにものでもありません。

さらに話を聴くと、

「それに、今、声高に教育改革なんて言われていますが、日本の社会的価値観や教育価値観の根本が変わるわけがないじゃないですか。そんなことはみんな分かっています。だから、家庭や親が変わるわけがないですよね。なので、生徒達が変わるわけもありません。先生が何かを変えようとしても無理!だから、私は私なりに、できることをやるしかないと思っています。」

ここで言う「できることをやる」は「新しいことはできないのでやらない」と同意です。

 

あきらめている先生

こうしたあきらめまみれの先生は、ほんの少し前までは決して少なくありませんでした。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、生活様式が根本から変わり、様々な価値観も大きく変わった今、あくまで私個人の感想ですが、久々にお会いした感じがしました。

ご本人の認識はこうです。

「あきらめとか何とかではなく、これが事実なんですよ。事実なんだから仕方がありません。」

事実と概念(判断・解釈・評価)との区別がついておらず、あきらめの認識が無い状態なのです。

そして、生徒に対して

「俺はあきらめている」

「君たち、あきらめろ」

とは言わなくても、あきらめは言葉の端々に滲み出します。

「やっぱりお前は集中力の無いヤツだな。」

「ほら、また計算ミスした。本当に君は何をやっても雑だな。」

「なんでこのクラスはいつもいつもバラバラなんだ。みんな自分勝手だ。」

これらは、『あきらめなさい。あなたは○○な人間なんです。』という烙印を押すコミュニケーションです。まったく無意識にこれをやってしまうのです。

このコミュニケーションは、服従させる、依存させるには大変効果的ですので、これを使って部下を教育しようとする上司もいます。大概そういう人は、

「いつまでたっても部下が成長しないんだよ」

と嘆いています。当然です。成長しないように仕向けているわけですから。

 

メガネのシミ

このコミュニケーションを例えるなら、無色透明だった相手の眼鏡に黒いシミをつけているものということになります。そうすると、眼鏡はやがてサングラスになっていきます。

『自分は○○な人間だ』というフィルターを通して物事や他人を見るようになるわけです。チャンスがチャンスに見えませんし、可能性も価値も見出せません。

相手の眼鏡にシミをつけるのは、自身がサングラスをかけている人。透明眼鏡の先生は、生徒の眼鏡にシミをつけません。自分自身に可能性があることが見え、目の前の生徒達が持つ可能性が見えています。いろんな選択肢を持っています。『できない理由』ではなく、『やるための方法』を考え、行動します。

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大村 伸介(おおむら しんすけ)

株式会社成基総研 コーチング室 室長


集団指導塾を経て、2004年株式会社成基入社。

教室長、エリアマネージャー、本部長補佐、副本部長を歴任。

現在は、教育コーチング、パパママコーチングセミナーのトップ講師として教職員研修、保護者講演会等で全国を飛び回る。

日本青少年育成協会認定上級教育コーチ・認定A級トレーナー、主任研究員。

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