【大矢 純】主体性を引き出す話のはじめかた

前回は主体性を引き出す発問の方法についてお伝えしました。発問のしかたによって生徒の主体性が大きく変わってくることがお分かりいただけたと思います。今回はその前段階、本題への入りかたに焦点を当てます。

人は好き嫌いや興味のあるなしによって聞こうとする気持ちが大きく変わるものです。好きなことは、知らないことがあるとそれが難しくても複雑でも、大きな興味を持って聞くものです。知りたくて、興味を持って聞くので、しっかりと記憶に刻まれます。また、実際にやってみようという気持ちにもなります。

一方、嫌いなことや知らないことには面倒くさいし知ったところで何の役に立つのだろうかと思ってしまい、新しい情報を受け取ろうとしないものです。

また、好きでも嫌いでもない中間の場合は、新しいことを聞いた時にそれが役に立つのかどうか、理解がそれほど面倒でないか、自分にとって難しくないか、といった観点から聞く・聞かないを判断します。ただし聞く場合でも、それほど興味がないので、分かった気になるだけですぐに忘れてしまいます。

さて、授業ではどうでしょう。残念ながら、好きなことや興味のあることの方が嫌いなことや興味のないことよりもはるかに少ないのではないでしょうか?

まずは、『閉店ガラガラ』とシャッターを閉められないようにしなければなりません。

 

教師目線でなく生徒目線で

人に何かを伝えるという観点で考えたときに、授業というものは非常に過酷な状況だと私は思います。

家族や親しい友人であれば、相手の人となりや好き嫌いだけでなく、これから話そうとする内容についてどの程度の基礎知識があるかもよく分かった上で話をします。それでもなかなか分かってもらえないことが多々あります。ただ今日のことを話すだけならまだしも、自分の考え方や気持ちを分かってもらうのはなかなか難しいものです。まあ、それが人間というものなのかもしれません。

授業ではどうでしょう。実は生徒の人となりや好き嫌いを、教師はほとんど把握できていません。そんな状況で教師は何度も説明していて分かりきっていることを、生まれて初めて聞く生徒に伝えるのです。しかも残念なことにほとんどの場合、好きでもなく興味もない内容なのです。それを正確に伝えるということは並大抵のことではありません。

ところが、教室という空間で教壇に立つと、生徒に向かって話せば伝わるのではないかという錯覚に陥ります。生徒には「前回の授業でやったのに」と言ってしまったりします。

教師はたいていその教科が好き、または得意だったケースがほとんどです。逆に、だからその教科の教師をやっているとも言えます。ところが、生徒の大半はそうではありません。

だからこそ、少なくともシャッターを閉められないように本題に入る必要があるのです。

特に理系科目の先生は結論を先に言ってしまいがちです。めあてや目標を明示するようにと言われている、ということもあるとは思いますが、単刀直入にそれを伝えると、大半を占める「好き以外」の生徒にとってはその瞬間『閉店ガラガラ』になってしまう原因になります。分かりやすく整然と伝えることも大切なのですが、めあてや目標を伝えるための話のもっていきかたを意識すると、『閉店ガラガラ』を少なくすることができます。

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大矢 純(おおや  じゅん)

授業学研究所 所長

株式会社授業学研究所代表取締役。1966年岐阜県生まれ、東京都育ち。数学の授業や教員育成などの経験をもとに、生徒のやる気を引き出すノウハウを体系化した授業学を提唱。
2009年に授業学研究所を設立し、未来の日本を担う子どもたちのために、授 業学の確立と普及を行っている。
全国の教育委員会、日本私学教育研究所、東京・神奈川・兵庫などの私立中高協会や連合会を始め、各地の学校で研修や講演、コンサルティングを行うなど、活躍の幅を広げ5月よりオンライン講座も開講している。

▼『大矢 純』の過去記事を読む

【2020/5月】主体性を引き出す発問の方法

【2020/4月】主体性を引き出す授業の始めかた

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