【大村 伸介】変わるきっかけとは

新年度が始まり、およそ3か月が過ぎました。前号で、そろそろ特定の生徒を『色眼鏡=サングラス』で見ることが出始めてきます、と書きましたが、いかがでしょうか。この続きというわけではないのですが、興味深い話を聞きましたので紹介します。

かれこれ数十年前の話だそうですが、福岡で非常に荒れた中学校がありました。この話を紹介してくれたのは、荒れた学校の暴れん坊だったかつての生徒です。他校との抗争、殴り込み、お礼参り、喧嘩は日常茶飯事だったそうです。

そんな学校に新しい校長先生が着任しました。この校長先生は、毎朝校門に立って朝の挨拶をすべての生徒にしていたそうです。初日、暴れん坊軍団が学校へ到着。さぁ、新しい校長はどうくるか、暴れん坊軍団はいつもにも増して気合十分に、校門前に到着。

「おっ!君たちその制服、かっこいいねぇ!ちょっと写真撮らせてくれない?」
「?????」

訳の分からない暴れん坊軍団を尻目に、スマホ、ではなく、写ルンです、で写真を撮る校長…。まぁ、初日だけか、と思っていた暴れん坊軍団でしたが、来る日も来る日も毎朝、
「お!今日もイケてるね!」
「お!今日もバッチリだね!」
なんていう声掛けが続き…悪い気はしなかったそうです(笑)。

そんな平和な(?)毎日の中、ある日、他校の生徒が殴り込みに来たそうです。今までであれば、屈強な先生方が体を張って止めに入り、そこに暴れん坊軍団も加担し…昭和の時代ですから、テレビドラマのワンシーンのような光景が繰り広げられていたそうです。

そして頃合いを見計らって(?)水戸黄門の印籠よろしく、校長先生が警察を呼び、事態が収拾するという展開だったそうです。ところが、この新しい校長先生は違いました。なんと、殴り込みに来た生徒たちを校長室に招き入れ、お茶とお菓子を出したそうです。
「君たちも、うちの学校の諸君と同じくらいキマッてるじゃないか!」
なんて言いながら記念写真を撮っていたそうです。

卒業生の暴走族が来ても同じで、
「かっこいいバイクだね!ちょっと乗らせてよ!」
なんて言いながら、恒例の(?)記念写真…。
一事が万事、こんな調子だったようですので、次第に殴り込みが減っていったそうです。

であれば、こちらから行ってやろうじゃないか、と考えた暴れん坊軍団。夏のある日、他校へ殴り込みに行ったそうです。もちろん、殴り込み先の校長から連絡があり、警察からも指導が入ったそうです。

その翌日、登校すると、校門でいつもと変わらない校長先生。
「ちょっと、君たち、校長室に来なさい」
『お!いよいよ本領発揮か!上等じゃねえか!』
期待に胸を膨らませる暴れん坊軍団。
校長室に入るや否や、お茶とお菓子が出てきたそうです…。

面食らう暴れん坊軍団に、
「ままま、お茶でも飲みながら。で、君たち昨日、○○中学に行ったそうじゃないか。それで、向こうの校長は君たちのことを、こんな風にもてなしてくれたかな」
「…」
あまりの展開に言葉も出ない暴れん坊軍団。
「先生はね、他校の生徒が来たり、卒業生が来たらね、こうやってお茶を出してもてなしているんだ。いいかい、お茶も出してくれない、そんなとこは行く価値がない。もう、行かないほうがいいよ」
一同、言葉も出なかったそうです。

当時を振り返ってこの方は、
「もうね、なんかあほらしくなってきてね(笑)。この校長が来て2年で校内暴力とか他校との抗争とか、ほんとに無くなったんだよね」
と言ってました。

同時に、
「頭から押さえつけられるんじゃなくって、同じ目線で関わってくれていることがうれしかったなぁ。今、自分が、この校長先生みたいな関わりが人とできるかどうか…。いやはや、変わった人というか、すごい人だったねぇ」
とも。

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