【森上 展安】入試でジェンダーを考える

毎日新聞が提起した都立高校の男女の合格差の問題が、都議選のこともあって話題になっている。

また、3月14日付朝日新聞EduA紙面では、私立中学の共学校の合格点の違いをなぞり、女子の受験生の親の不満を掲載。また、本誌5月22日付朝刊では早稲田大学教授豊永郁子氏の論説を掲載し、東大に女子大生が少ないのは中等教育で実績のある男子校に女子が入学できないからだ、という率直な物言いに大きな反響があった、という。

男女合同選抜なら、女子中位校にダメージ

毎日新聞の提起した問題は都立高の入試に関してであり、男女別選抜を行っているために男女で合格点に差が生じていることを問題視している。

これを男女合同選抜にした場合、消息筋によれば1,500名程都立高への女子合格者が増える、という衝撃的データもあるそうで、それだけ男子の不合格者が出ることになるという。
主に中位層女子高を直撃する話だが、もしこれが現実問題として改革されれば、女子減少分を男子で補うために「共学化」を急がなければならない。その意味では都教委が果たして総合選抜に踏み切れるのかが焦点だ。

都教委の立場は在籍比を男女5対5にする上で、男女別選抜を是とする立場でそれなりの合理性はあるが、確かに個の能力に応じた機会均等を貫けば総合選抜に理がある。

その議論は個々人の能力選抜に性別を持ち込むことで、結果的に女子に差別的になっていること、合格できる学力を持つ女子を性別を理由に入学させていない、という批判が社会通念に照らして妥当かどうか、ということだろう。

これは先般行われた医学部受験における女子受験生差別と全く同じ構図で、先日の地裁判決はその不当性を認めていたから、こうした法的判断が積み重なれば性別選抜を総合選抜に切り替えざるを得なくなるだろうが、他府県高校入試は総合選抜が通例と聞くので都の主張が受け入れられるかどうか。

 

中学受験に影響はあるか

前記EduA紙の記事によれば、慶應中等部(男子140名、女子50名)は男女別定数に関する取材にノーコメント、早実は現状男子85名対女子40名を検討の余地あり、と取材時(3月)にコメントしている(実際に直後、15名男子定員を削減)。

明大明治は20年入試から6対4を5対5にしたのは「時代に対応した」とコメント。青山学院は男女同数になるよう考慮して合否を判定している、とコメントしている。

このように中学受験は毎日新聞の提起したジェンダー問題の主張点である総合選抜の立場ではなく、男女別選抜を前提にしている上、さらに女子の定員をあえて少なくしている学校もあるのが現状だ。

ところでEduA紙は、大学付属共学校を取材対象としているが、こうした付属共学の中学新設は2008~2010年に集中しており、比較的新しい。定員差が大きい慶應中等部は1947年の学制改革時に共学で開校なので、いわばその時代の共学のあり様だったといえるだろう。

上記の大学法人立の中学校はそもそも大学というアカデミズムのあり方とも重なるわけで、早稲田大学教授の豊永郁子氏が朝日コラムに寄せた言説が、恐らくアカデミズムでは支配的なのだと思う。

EduA紙が表に一覧にした中学校の中で唯一、男女の合格基準点が同じなのが渋谷教育学園幕張で、こちらは男女総合選抜だということがこの発表でわかる。つまり今日の時点で入試におけるジェンダーの問題意識に堪えているのは表中、渋幕1校だけと言える。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

(株)森上教育研究所 所長


1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。

中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。

中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。

著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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