【社会情報大学院大学】コラム「教員と知識基盤社会の理解―Society 5.0 時代の学び」

コラム「教員と知識基盤社会の理解―Society 5.0 時代の学び」

なぜ知識基盤社会にこだわるのか

筆者は繰り返し「知識基盤社会」の重要性について論じてきました。
そして、教員を含め教育に携わる者は、知識基盤社会について理解しておく必要があると考えています。 それは学習指導要領の改正に、知識基盤社会という背景が大きく影響しているからです。学習指導要領のなかで、知識基盤社という語を直接的に用いているのは、大きく2ヶ所あります。

ひとつは、学習指導要領解説です。
新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域で重要性を増す、いわゆる知識基盤社会において、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和を重視する『生きる力』を育むことがますます重要になっているという認識…」(『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編』、下線部筆者)と指摘されるに至っています。
また、下線部の言葉は知識基盤社会が明示的に示された答申である『我が国の高等教育の将来像(答申)』(2005年)で、定義された知識基盤社会の定義を用いています。

もうひとつは、地歴科目において新たに設けられた「世界史探究」のなかで、
「科学技術の高度化と知識基盤社会」(下線部筆者)として触れられています。
この単元では、「科学技術の高度化と知識基盤社会に関わる諸事象の歴史的背景や原因、結果や影響、事象相互の関連」に着目することで、知識基盤社会の展開と課題を理解する学習が目指されています。世界史の授業ではあるものの「欧米などの動向のみを取り上げることのないよう留意し、持続可能な社会の実現に向け、科学技術における知識のあり方について、人文科学や社会科学等の知識との学際的な連携が求められていることに気づく」ように、授業を展開することが求められているのです。

このように「知識基盤社会」は高等教育や科学技術政策だけではなく、初等中等教育分野にも影響を与えていることがわかります。
では、われわれが直面しようとしている知識基盤社会はいかなるものなのでしょうか。
教育者として、これから社会へ送り出す学び手(子どもたち)が生活することになる知識基盤社会について理解していなければ、私たちは未来ある子どもたちの学びと成長を支え、知識基盤社会への備えを用意することはできないのではないか。
そんな考えから、筆者は教育と知識基盤社会にこだわっています。

 

知識基盤社会に必要な学び

知識基盤社会は、創造と俯瞰が重要な社会です。これは学習指導要領のキーフレーズになっている「生きる力」にも通ずるように思います。
すなわち、子どもたちがいま直面している課題に対して、知識や情報を主体的に探すことが求められているのです。そのためには、知識や情報がどこにあるのかを俯瞰的に見ることが重要です。アインシュタインは「いかなる問題も、それが生み出されたときと同じレベルで発想していては解決できない」と述べたといいます。

ひとつ段を登って、課題解決の観点から、どこにどんな情報や知識があるのかを探し出す必要があります。
そして、見つけ出した情報や知識をどのように組み合わせて、課題解決策を創造することができるのか、そうした思考力が求められています。 自分自身で知識や情報を駆使して解決することが重要になるでしょう。
これこそ、高度に複雑化した社会において、主体的に課題を解いていく「生きる力」なのです。

したがって、いま求められている教育というのは、教育哲学者のパウロ・フレイレがかつて指摘したように「銀行型教育(先生が貯蓄している知識を子どもたちに伝達することを重視する教育)」から、「課題提起型教育(自らの生きる社会にある課題を批判的に捉え、対話を通して問題の根源を深く理解することを目指す教育)」へ転換が求められているのです。
主体的にかかわり、人や事象と対話をする深い学びといえるでしょう。

それを教える人にも当てはめてみてください。教師もまた「教える」だけではなく、「学びのプロ」であってほしい。
自分がもっている貯蓄的な知識を伝達するのではなく、「課題提起・課題発見」をどのようにするのか、見本をみせる必要がありそうです。

教えるだけではなく、自分自身のためにも学ぶ機会が必要です。どうやって学ぶのか/どうやって学びに興味をもつことができるのか、そんな経験を教師も必要としているのだと思います。

 

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学 実務教育研究科長

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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