【出口 汪】幼児期の英語教育

英語の4技能は本当に必要か

文科省は小学校から英語を科目として取り入れることと、従来の読解中心から四技能へと変える方針を決定しました。
そのため多くの塾は慌てて幼児の頃から英会話指導を始めようとしています。
しかし、こうした幼児期の英会話への過度な期待は一過性のものであり、私たちはもっと冷静に考える必要があります。

まず単純な疑問として、本当に英語の4技能は必要だろうかという根本的な問いかけから始めましょう。

 

英語学習と英会話とを区別せよ

まず従来の英語学習と、英会話とは明確に区別するべきなのです。
なぜなら、英会話は学習でも何でもありません。
英語を話せるということは、習熟できたかどうかなのです。
私たちはご飯を食べる時、箸の持ち方を意識しません。自転車に乗る時でも、運転の仕方を意識することなく、自在に操作することができます。
毎日の反復の中で、身体が自然と覚えてしまうからです。
これを身体化とか習熟と呼んでいるのですが、言語の習得とはまさにこのことに他なりません。

アメリカでは、子ども達は何も学習しなくても英語を喋ることができます。
私たちが習わなくても自然と日本語が喋れるようになるのと同じように。
私たち日本人が英語を喋れないのは、単純にそれを習熟する環境を持っていないからなのです。
日本にいる限り、私たちはすべて日本語で用を足してしまうので、絶えず英語を使わなければならない必要性を感じません。
もし英語を喋りたいならば、インターナショナルスクールに入学させるか、留学させるかしかありません。
現に、海外で仕事をする必要が生じたビジネスパーソンは、現地で数年生活するうちに自然と喋れるようになっています。

では、日本人全員が本当に英語を喋る必要があるのでしょうか?
もちろん喋れないよりは喋れるに越したことがありませんが、アメリカ人は英語を喋るのに特にお金も時間も必要ありません。
私たちがアメリカ人のように英語を喋れるようにするには、膨大な時間とお金を必要とします。
これでは圧倒的なハンディとなってしまいます。何かを選択するということは、何かを捨てるということですから。

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出口 汪(でぐち ひろし)

株式会社水王舎 代表取締役


関西学院大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。

2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。

広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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