編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

私塾のトップに聞く:山本 豊 社長【早稲田アカデミー】 東京都

【早稲田アカデミー】愚直に「本気でやる子を育てる」塾作りをしたい!

1975年創業の早稲田アカデミーは、2012年に東証一部に上場し、売上規模では小中生対象の学習塾で日本一となっている。
当時5校舎規模の同社で学生講師からずっと生徒指導、そして教室運営、さらには経営に携わってきた「生え抜き」の山本豊社長に、コロナの影響と対策も含めて現状の課題と今後の方向性を中心に取材した。

山本豊社長

首都圏165校で生徒数約43,000名

千葉 私が御社の御三家クラスで講師を務めていたのが1995年ですから、
四半世紀ぶりの再会となります(笑)
よろしくお願いします。
まず現在の売上と利益、正社員数、教室数、生徒数などについて教えてください。
また事業部門はどのような構成になっていますでしょうか?

山本 お懐かしいです。
IRで公開されていますように、2021年3月期の売上は254億5,000万円、経常利益は10億8,000万円です。
正社員数は980名、生徒数は約43,000名、教室数は165校、内訳は早稲田アカデミーが156校、野田学園(野田クルゼ)が2校、水戸アカデミーが1校、集学舎が4校、海外子会社2校です。

 

「早稲アカDUAL」とは?

千葉 コロナ禍の中で今回御社は集団指導のすべての授業をオンラインにされましたが、昨年からの感染防止対策の取り組みについて教えてください。

山本 まず9/1から9/18まで対面を停止し、すべてオンラインに切り替えて授業を行いました。
また、時系列で申し上げると、昨年の3月に経産省からの要請のもと、2週間の対面自粛を行い、その分は後日に振り替えるなどしました。
4、5月は学校も一斉休校となり、ほとんどの塾もZoom等に切り替えてのオンライン授業となりましたが、6月には対面に戻りました。

その際に感染を心配する保護者からの要望に応える形で、対面とZoomのいずれかを選択受講できる「早稲アカDUAL」という新たなサービス形態の提供を始め、それからすでに1年以上、現在もこの形を継続してきています。
比率としては対面が8割でオンラインが2割ほどでした。
教室にいる先生が対面で指導しながら、並行して家庭でタブレットで授業に参加している生徒にオンラインでも対応するという、いわば「二刀流」です。

導入当初は特に、担当の講師は皆、かなり大変だったと思われます。
対面は受験学年が多く、オンラインはターミナル駅近くに住む生徒が多かったと思います。
それで今年の9月の話に戻りますが、9/19から早稲アカDUALで対面も再開したのです。
昨年からの取り組みで先生も生徒も慣れて、改善してノウハウも蓄積しましたので、切り替えでの不安は全くありませんでした。

 

オンラインで解決すべき3つの課題とは?

千葉 「双方向Web授業」を行われていますが、オンライン化のメリットとデメリット、そして今後の方向性についてはどのようにお考えでしょうか?

山本 通常対面からZoomのオンライン授業に切り替える際には、一般的にICT系の準備で新たな費用が
かかること、ご家庭で生徒の横には保護者がいらっしゃり、指導内容を見られてしまうこと、対面に慣れている先生からの反発があることなど、導入のブレーキとなる要素がいくつか考えられます。

千葉 指導内容を見られてしまうとどのような問題点となるのですか?

山本 塾での集団授業のなかでは、講師は雰囲気づくりや理解を深めるために、ときに脱線することもあるのですが、ご家庭の生徒のすぐ脇に保護者がいらっしゃるとなると、より一層、「品質の維持」にも気をつけなければなりません。

千葉 全国的に、対面からオンラインに切り替えて売上が減少したという話もありますね?

山本 Zoomのオンライン授業では伝わらないものもあるという意識が先生にはあり、その分負担も大きくなります。
しかし、当社では社員全員で一斉に協力し合い、「本気でやる子を育てる」という教育理念のもとに結束して、生徒や保護者のニーズに全力で対応することができました。
そのため昨年6月以降は好調を持続し、一時期の生徒数減の心配も解消されました。
収支を度外視した「早稲アカDUAL」などの取り組みでスピード感も出て、赤字の危機を乗り越えられたのです。

 

オンラインにプラスαする「早稲アカRoom」

千葉 オンライン自習室「早稲アカRoom」の狙いと概要について教えてください。

山本 生徒が家庭で一人で学習する場合、どうしても緊張感や集中力の維持が難しくなります。
講師もオンラインだと対面ほどの熱量を伝えることができなくなるので、それにプラスαを加えるため、「早稲アカRoom」というオンライン自習室をつくり、オンデマンドで復習ができたり、質問対応ができるようにしたのです。
自習室では複数の生徒の頑張っている様子もわかるので、お互いに刺激になっています。

1 2