【小林 尚】高校入試の性別欄が廃止に

新しい年度を迎え、新たな道へと生徒さんを送り出し、そして新しい生徒さんを迎える季節となりました。
新型コロナウイルスや国際情勢など、相当の混迷を極める世の中ですが、平穏に暮らせる社会を目指していきたいものです。

さて、今回のトピックは昨年末に報道された「高校入試の性別欄の廃止」について取り上げていきたいと思います。
これは、東京都を除く46道府県の教育委員会が、2022年度入試までに公立高校の願書の性別欄を廃止することにした、というものです。

この決定の背景には、そもそもの男女の区分けを排する(性別と学力は関係ない)意図や、LGBTQなど性的少数者への配慮があると言われています。
各自治体でも実際にいくつかの声があがっており、例えば
「入学者選抜に性別は無関係で、不要な情報と判断した」(青森県)、
「性的少数者への配慮もあるが、性別欄がなくても困ることはなく、他県の状況も見つつ『本当に必要なのか』と議論してきた結果」(山梨県)
という意見もあるようです。

一方、東京都では、全日制普通科にて男女別定員制を設けている(すなわち高校内で男子・女子の人数枠を設定しているケースが存在する)ため、欄を残しています。
しかしながら、この定員制も段階的な撤廃が決まっているため、いずれ同様に消えていくと言われています。

 

高校受験の難易度変化の可能性

性別欄の廃止により、ほとんどの道府県で男女別の定員がなくなるわけですが、私は2つの観点で影響が発生するのではないかと考えています。
まず、合否に影響を与えうる合格点に変化が生じるということです。
実際、都立の高校受験は圧倒的に女子の方が難しくなっており、いくつもの報道で女子の方が合格最低点がかなり高い(場合によっては数十点以上)ケースが多いことが報道されています。
実際、私個人の肌感覚としても、また塾関係者と情報交換していても報道の内容は間違っていないと思います。

激しく報道されたのは東京の例であり、東京の受験環境として元々高校受験可能な私立女子校が男子校よりも極端に少ない背景があります。
その分、優秀な女子生徒が都立高校に流れているという見方もできるでしょう。

その観点では確かに東京は極端な例かもしれませんが、他の地域でも優秀な女子が多いことはいうまでもありません。
よって、今回の性別欄廃止や東京の定員制廃止に伴い、従来なら諦めていた高校に合格する女子生徒が出てくる一方、男子生徒は油断できなくなっていくでしょう。
受験に携わる先生方は、すでに認識されていることだと思いますが、実際のボーダーラインがどうなるのか、出願傾向の変化はどうなるか、毎年これまで以上に注意を払う必要があるかもしれません。

ちなみに私自身は、定員制廃止そのものには賛成の立場ですが、実行フェーズにおいては検討すべき要素がいくつかあると思っています。
例えば学校の設備を考えると、女子生徒が増えることで女子トイレや女子更衣室の増築が必要となります。
例えば5:5の男女比が3:7、2:8となれば当然のことです。

しかし、こうした対応は一朝一夕にはできませんし、そもそも試験をしてみないとどんな割合になるかは未知数です。
仮に男女の比率が大きく変化した場合、環境整備が追いつかず、女子生徒が学校生活を快適に送れなくなるかもしれません。
誰もが満足に学べる環境もきちんと担保すべく、あらかじめ予算を確保するなどの策を講じていくべきだと思います。

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小林 尚(こばやし しょう)

株式会社キャストダイス(CASTDICE Inc.) 代表取締役
個別指導塾CASTDICE 塾長


埼玉県出身。私立開成高等学校、東京大学法学部第Ⅰ類卒業。
大学在学中は大手予備校に勤務し、東大・医学部をはじめ多数の難関大合格者を輩出する。また、新規校舎立ち上げに参画し、各種経営指標で全国1位を連続で獲得した。卒業後は経営コンサルティング会社の戦略部門を経て株式会社キャストダイスを設立。新規事業開発、人材・組織変革を専門に3度のプロジェクト表彰を受賞する他、人材関連企業を経営する等、活躍のフィールドは多岐にわたる。
近年ではYouTuberとして、受験・キャリアに関する動画を配信中。開成高校弁論部・コンサルティングで培ったロジカルな指導力を武器に、大学や教育機関での講義・講演・セミナーを実施している。『開成流ロジカル勉強法』(クロスメディア・パブリッシング刊)。

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