【大村 伸介】安心感が生まれるメカニズム
この号が皆様のお手元に届くころには、入学式、始業式といったまさに1年の始まりの時期となります。
先生方も生徒たちも希望に胸を膨らませていることと思います。
同様に、新型コロナウイルス感染症の動向と学校・学級運営が表裏一体となっている今、不安もお持ちのことでしょう。
その不安をしっかりと受け止めることが、先月号でお話しした「傾聴」なのですが、まずは新学期、新年度、この「傾聴」を意識していただきたいと思います。
それだけで、生徒や保護者の安心感が高まります。
「放す」と「離す」
では、なぜ「傾聴」によって安心感が高まるのでしょうか。
そのメカニズムをお話ししましょう。
人が抱えている「課題」「悩み」「夢」「目標」…これらのものは目には見えません。
それらを荷物に例えてみましょう。イメージはこんな感じですね。
講座や研修では実際に荷物を持っていただく方を参加者から募り、デモンストレーションを行います。
「いま、どんな気持ちですか」と尋ねますと、
「重たい」「早く置きたい」とおっしゃいます。
「いま、いくつ荷物を持っていますか」と尋ねますと、
「よくわからない」「そんな余裕はない」とおっしゃいます。
その荷物を受け取ることが、「傾聴」なのです。
すると、どんどんスペースが空いてきます。
「いま、どんな気持ちですか」と再度尋ねますと、
「すっきりした」「楽になった」とおっしゃいます。
「いま、いくつ荷物を持っていますか」と尋ねますと、
手放した荷物を見て明確に答えられます。
まとめると、こうなります。
「放す」ことで生じる心理的負担の軽減、「離す」ことで生じる客観性、これが、「傾聴」の効果です。
そのことが、生徒や保護者の安心感を生み出すのです。