編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

私塾のトップに聞く:山下 一仁 代表取締役社長【明光ネットワークジャパン (明光義塾)】 東京都

【明光ネットワークジャパン (明光義塾)】「やればできる」の記憶をつくる

全国47都道府県すべてに教室展開する明光義塾、そのFC本部である明光ネットワークジャパンは、コロナ禍で少なからずダメージを受けたが、それをバネにこれから飛躍しようとしている。
その具体的な方向性と現在の課題などについて、山下一仁社長に聞いた。

山下 一仁 代表取締役社長

全国47都道府県に1766教室展開、生徒数は10万人以上

千葉 最新の生徒数と教室数について教えてください。

山下 2021年11月末現在、明光義塾全体の教室数は1,766、その内FCが1,362教室、明光ネットワークジャパンが運営する直営が207、グループ会社であるMAXISエデュケーションが運営する教室が93、同じくグループ会社のケイラインが運営する教室が41、京都を基盤とするTOMONIが運営する教室が42、Onelinkが運営する教室が20でセグメントに分けた明光義塾直営事業が合計で404となっています。
現在47都道府県すべてに展開しており、明光義塾チェーンに加盟しているオーナー数は419名です。
グループ会社のMAXISエデュケーション、ケイライン、TOMONI、Onelinkが運営する197は、FCと同じ10%のロイヤリティが計上されています。

千葉 自立学習REDについて教えてください。

山下 48教室のうち直営が17でFCが31です。
明光ネットワークジャパンと提携する前のFC教室、スプリックス社の直営教室は引き続きスプリックス社が運営していますが、提携後は新規FCオーナー募集を当社が実施し、教務的なことはスプリックス社が実施することになっています。

 

DX戦略本部を設置して未来教育を模索中

千葉 今後の指導システムや教育ICT化、進路指導などについて変更や新しい取り組みはありますか?

山下 社会全体で多様性が目立つようになり、子どもの教育についてもその子の未来に合った教育を提供しようと考えると、個別指導の形がベストであって、まだ個別指導ニーズは伸びると考えています。
他者との差別化という観点では、きめ細かいカウンセリングのほか、当社はDX戦略本部を設置して、WEBマーケティング、ICTによるコミュニケーションやデータをどう活用していくか、より高いセキュリティは何かといったことにも取り組んでおり、専門性の高いその道のプロにも入社していただきました。

これまでは折込チラシが生徒募集活動の中心でしたが、今後は明光義塾の公式ホームページのデータを分析したり、会員である生徒10万4,800名の入会前後のデータや講師のデータなどを活用していく方針ですね。

 

「選択と集中」で本業の進化を目指す

千葉 早稲田アカデミー個別進学館の株式を、資本業務提携にあった早稲田アカデミーに譲渡し、提携関係も解消されましたね。

山下 11年間、とても良好な関係を築いてきました。
試行錯誤を経て互いにノウハウを得ることができ、それぞれが成長できたと思っています。
ただし、やはり早稲田アカデミー個別進学館は同社が独自の運営をした方がスピーディであり、当社としても明光義塾の運営に集中した方が良いという判断になりました。
私もかつてグループ会社であった東京医進学院という医系予備校を担当していましたが、選択と集中という方針のもとに解散に至っています。

 

事業継承のタイミングで直営比率が高い?

千葉 コロナ禍の影響と今後の課題や差別化について教えてください。

山下 2020年は軟調で2021年の春から底を打ち始め、夏以降反動で業績回復しています。
しかし2022年の年明けからさあ大丈夫と思っていたらオミクロン株の影響があり…問い合わせは多いのですが入塾手続きまでに時間がかかり、これまでより動きが後ろにズレていると感じます。
だからといって、飲食業など他の業界と違い学習塾業界は大きく下振れしていませんので、必ず戻ると思います。

現在のFC:直営の比率は6:1と高いですが、これは戦略的なものではなくタイミング的なものです。
創業者が明光義塾チェーンに加盟して数十年たち、事業継承のタイミングが来ています。
ハッピーリタイアされて二代目に承継するのか、承継者がいないので譲渡するのかは、ケースバイケースです。
つまり案件ごとに取り組んだ結果でたまたま直営が増えたということです。
また、コロナ禍で仕方なく教室を減らしたオーナーも、これから引き続き頑張ろうという意識の高い方が多いのも事実です。

明光義塾オーナーズクラブ、通称「MOC」は、明光義塾チェーンの特色の一つとなっていますが、元々会長の渡邉がFCオーナーの皆さんに頼んで作った組織です。
オーナー同志の選挙で選ばれた理事が21名、昨年発足した九州ブロックの4名を合わせると合計25名の理事で構成されており、任期は2年、半数改選で年2回の研修会と年4回の理事会があります。
これと別にブロックオーナー会があり、定期的に受験についての勉強会や入会カウンセリング、成功事例の発表などを行っています。

明光本部からはスーパーバイザーやブロックマネージャー、事業部長などが必ず出席し、必要な説明や意見交換を活発に行って風通しの良い関係の維持に努めています。

本部主催による全国明光義塾総会が毎年12月の第一週に行われており、年度表彰などを行いますが、このところコロナの影響によりオンラインで行われています。今年はオンラインとリアルのハイブリッドでの開催を考えています。

 

明光ネットワークジャパンとしての社会的意義は何か?

千葉 「教育事業を核として、人づくりのトップカンパニーを目指す」ということを掲げていらっしゃいますが、人材採用と育成の取り組みをお聞かせください。

山下 2021年に若手社員も含めて社内でチームを作り“Purpose”、“Values”、“Vision”について議論しました。
明光として社会的意義はどこにあるのか?
内部だけでなく外部にもわかりやすい“Purpose”、“Values”、“Vision”とは何か?会長の体験も含め、外部コンサルにも意見を聞きながら構築しましたが、これに共鳴・共感して、若い人たちが入社してくれたら嬉しいですね。
ベースとしては“Purpose”つまり「やればできる」の記憶をつくるということで、現在テレビCMやWebはすべてこれを基にしています。

それと大学生講師たちのキャリア教育「講師フォーラム」に取り組んでいます。
具体的には「主体的に働けるしくみ作り」で、「高校生のカウンセリングとは何か?」などの指導現場の課題をテーマとして、シンプルな問題解決を目指していて、直営教室ではとても好評です。
これをFCの教室にも広めていきます。
Z世代は私たちとは価値観が少し違うのでしょうが、議論好きでテーマを与えると主体的に考えてくれます。
人材採用は今後も難しくなると思いますが、現在の人的資源を最大限活用したいと考えています。

 

どんな子にも教育を受けさせたい!!

千葉 社会貢献活動について、その取り組みをお聞かせください。

山下 渡邉弘毅会長と奥井世志子相談役が私財である明光ネットワークジャパンの株式を出資した公益財団により、母子家庭や施設に入っている子などに、返還義務のない奨学金を給付しています。
2014年からの7年間で515名に計3億4千万円を給付しましたが、これは明光義塾の創業者として、どんな子どもたちにも教育を受けさせたいという強い思いからです。

明光ネットワークジャパンの配当金を原資としており、配当金の額によって変更することがありますが、概ね大学生には60万円、高校生には40万円を支給しています。
中には難関大学を卒業して官庁に入った人もいます。
また、外国人の子どもが多い自治体で、日本語の話せない子ども達をサポートする取り組みも始めました。

昨年「HRソリューション事業」を立ち上げ、ベトナムで約240名を定員として、介護や看護の仕事を希望しているベトナムの生徒に日本語を指導し、2年後に訪日して医療現場で働くという案件を外務省より受託しました。
大阪の医療法人愛仁会と、またベトナムの日本語教育で有名なハノイ大学と業務提携しており、少子高齢化が進行している日本と、将来高齢化になると予想されるベトナムの両国で、未来を先取りした教育支援関係を構築しています。

 

キーワード「You Can If You Think You Can」の意味とは?

千葉 社長としての次の目標、個人としての夢などを教えてください。

山下 当社では教育だけでなく人材派遣や人材紹介も手がけており、「人の可能性をひらく企業グループとなり輝く未来を実現する」をビジョンとしています。
2019年に日本財団が18歳の若者に対する意識調査を日本を含めた9ヶ国、各1,000人にアンケート調査をしましたが、自分を「大人」「責任ある社会の一員」と考える日本の若者は、約30%~40%と他国の3分の1から半数近くにとどまり、「将来の夢を持っている」、「国に解決したい社会課題がある」との回答も他国に比べ30%近く低い数字となっています。
さらに「自分で国や社会を変えられると思う」人は5人に1人。
途上国、欧米先進国のいずれと比べても日本の数字の低さが際立つ調査結果となっています。
どうせ自分なんか、どうせ頑張っても…というあきらめ感がある。
日本の教育、日本の社会の課題の本質がここにあるのではないでしょうか。

いつも会長の渡邉がFCの新オーナーに向けて話すことがあります。
渡邉が感銘を受けた本に書かれていた言葉「You Can If You Think You Can」です。
「できると想えばあなたはできる」この気持ちがあればいつでも新しいことにチャレンジできるという意味です。
日本の若者の意識を鑑みると、明光義塾の社会的存在意義を再確認するとともに、明光義塾の魅力を強く発信していきたいですね。
明光義塾の創業以来の卒塾生は200万人に達しており、これは国民の100人に1.6人という数字にもなります。
明光義塾の学びのインフラとしての使命感を熱く感じます。

それからこれは私見ですが、コロナによる休校が明けて生徒が教室に来た時の笑顔が素晴らしいこと!!
自分の居場所が明光義塾にあるから笑顔で来てくれるのです。それを絶やしたくないですね。
コロナ禍ではオンラインを介しているため、コミュニケーションが一方通行になりがちなので、もっとリアルで皆さんと話し合いたいです。
本部とオーナーが一体となって共存共栄を図ること、この精神を大切にしていきたいと思っています。

 

(2022年2月16日、東京都新宿区の本社にて取材)