【小林 尚】共通テストに「情報」科目を導入することの問題点

大学入試改革は、受験生だけではなく私たち教育関係者にも関わることです。
これまでも大学入試改革の議論は度々されてきています。
しかし、これらの入試改革議論に一貫しているのは、具体性の無さです。
改革の全体的な枠組みを決めるのは良いものの、具体的な内容を後から決めていき、かつ具体的な情報発信が遅いため、改革の枠組みの発表を聞いても具体的な改革内容が分からず現場は混乱しがちです。

改革の発表を聞いたり読んだりすれば、目指そうとする理念が素晴らしいのは理解できますが、現状に即してそれが達成可能か、それが効果的かはまた別の問題です。
今回は2025年度以降の大学入学共通テストの「情報」の導入について述べたいと思います。

 

共通テストに「情報」科目導入の検討

2025年度以降の大学入学共通テストでは新しい学習指導要領に対応した試験とするために、「情報」科目が導入されることが発表されています。
2022年秋冬頃に問題作成の方向性(施策問題を含む)が公表されるとのことです。
現段階で、サンプル問題や問題のねらいなども発表されており、大学入試センターからその内容を確認できます。

 

「入試改革を考える会」の私教育最前線「情報」科目導入への反対意見

この流れを受けて大学教授や予備校講師らによる「入試改革を考える会」が「拙速な導入に反対」との声明文を発表しました。
同声明文によると反対理由は3つあります。

1つ目は「受験生の負担が増加する弊害」、
2つ目は「高校現場での教育体制の不備」、
3つ目は「共通テストに導入される予定の「情報Ⅰ」は2022年4月からスタートする新しい科目であること」です。

「入試改革を考える会」は「情報」科目の共通テストへの拙速な導入は反対していますが、導入そのものへは反対していないことはご注意ください。

それぞれの理由をさらに詳しく見ていくと、「受験生の負担が増加する弊害」は現状でも国立大学を受験する場合、多くの大学で5教科7科目という膨大な学習範囲となっており、受験生にとって非常に負担が大きいと言わざるを得ません。
ここに「情報」科目が加わることで、負担がさらに増加すると考えられます。

もちろん全受験生が「情報」を受験しなければならないのか、別の科目との選択制になるのか等、現時点で明らかになっていない部分もあるので、負担増を即座に断定することはできません。
しかし現在の5教科7科目に「不要な科目」があるとも言えない以上、負担増の可能性は十分にありえるでしょう。

残りは「高校現場での教育体制の不備」と「情報Ⅰは2022年4月からスタートする新しい科目」についてです。
「入試改革を考える会」によれば、授業で情報科を教える専任教員は全国的に不足しています。
「情報Ⅰ」はこれまでの「社会と情報」「情報の科学」とは内容が異なりますので、実際の授業の質にバラつきが出ることが予想できます。

旧科目「社会と情報」や「情報の科学」を履修していても不利益が生じないように、両科目の共通部分に対応した必答問題に加えて、各科目に対応した問題を出題し選択させることを発表していますが、こちらも受験生と教師にとっては混乱を招きかねない状況であると考えられます。
さらに、こういった不明瞭な状況の中でリソース不足の学校現場に「大学入試」という公平な競争が必要である場への対策を一任することも、問題と言えるでしょう。

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小林 尚(こばやし しょう)

株式会社キャストダイス(CASTDICE Inc.) 代表取締役
個別指導塾CASTDICE 塾長


埼玉県出身。私立開成高等学校、東京大学法学部第Ⅰ類卒業。
大学在学中は大手予備校に勤務し、東大・医学部をはじめ多数の難関大合格者を輩出する。また、新規校舎立ち上げに参画し、各種経営指標で全国1位を連続で獲得した。卒業後は経営コンサルティング会社の戦略部門を経て株式会社キャストダイスを設立。新規事業開発、人材・組織変革を専門に3度のプロジェクト表彰を受賞する他、人材関連企業を経営する等、活躍のフィールドは多岐にわたる。
近年ではYouTuberとして、受験・キャリアに関する動画を配信中。開成高校弁論部・コンサルティングで培ったロジカルな指導力を武器に、大学や教育機関での講義・講演・セミナーを実施している。『開成流ロジカル勉強法』(クロスメディア・パブリッシング刊)。

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