【大矢 純】生徒が聴きたくなる伝えかた

先月は「生徒に届く伝えかた」ということで、ベースとなる教師と生徒との縦の近い関係づくり、授業では誤解を恐れず勇気をもって簡潔に伝えること、簡潔な話の組み立ての具体例として論理型と心情型を紹介しました。
生徒に届く伝えかたがきちんとできるかどうかは、生徒だけでなく保護者や校内の同僚あるいは上司に対しても大切なことです。

さて、生徒に届く伝えかたができても、それを生徒が聴きたくなるかどうかはまた別問題です。
今回は先月の内容の具体的なトレーニング法と、生徒が聴きたくなるような伝えかたのうち、身につけやすい順に4つお伝えします。

 

話の組み立てのトレーニング法

簡潔な話の組み立てを身につけるトレーニングとして1分間スピーチが有効です。
1分の中での時間配分の目安は次の通りです。

1分で簡潔に話すことができるようになると2分でも5分でも10分でも、その応用は十分可能です。
例えば「私はラーメンが好きです」ということを1分間スピーチで伝えることを想定してみましょう。

①論理型
最初の15秒は『起』です。
「お昼に食べるごはんはいろいろあるでしょうけれど、一番好きなものは何でしょうか?」としてみます。
次は『結』なので「私はラーメンが好きです」とします。
そして、残りの35秒でラーメンが好きな理由を述べます。

②心情型
最初の15秒は『起』です。
今度は「もうすぐお昼休みですね。いろいろな昼ごはんがありますがラーメンが好きな方は手を挙げてください」としてみます。
次の35秒は『承』なので
「数多くの素材から時間をかけて作られるスープから始まって、麺づくり、さらにチャーシューや煮卵、メンマなどなど、これほどまで手間と情熱をかけられた料理はなかなかないと思うのですね」といった想いをぶつけ、
最後に『結』として「だから私はラーメンが好きなのです」と述べます。

ケースバイケースで、それぞれのメリット・デメリットがあります。
皆さんなら、どのように組み立てますか?

 

認知容易性を活用する

私たち人間の脳は、よほど好きなことや興味のあること以外は、全く新しいことを聞かされた時にはストレスがかかり、あまり気乗りがしないように作られています。
逆に今まで見たことや聞いたことがあるものに関連付けられると、受け入れやすかったり正しいと思いやすかったりする特性があります。この特性を認知容易性といいます。

授業は基本的に初めて見るものや初めて聞く話です。
ただし、それが全く見たことも聞いたこともないものなのかといえば微妙なところです。
学習上のレディネス、つまりその前段階の話や内容の断片に、すでに触れたことがある場合が多いはずです。
このように、すでにもっている知識に新しい知識をリンク付けしていく、これが認知容易性を活用するということです。

具体的な話をしましょう。
①函館から網走まで、この北海道の二つの地点の距離は約600kmもあるのです。
北海道は大きいですね。

②函館から網走まで、この北海道の二つの地点の距離は、東京からだとどのぐらいだと思いますか?
実はこの二つの地点の距離は東京から青森あるいは広島と同じぐらいなのです。
北海道は大きいですね。

②の方が随分遠いなあと、イメージしやすく印象に残るのではないでしょうか。

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大矢 純(おおや  じゅん)

授業学研究所 所長

株式会社授業学研究所代表取締役。1966年岐阜県生まれ、東京都育ち。数学の授業や教員育成などの経験をもとに、生徒のやる気を引き出すノウハウを体系化した授業学を提唱。
2009年に授業学研究所を設立し、未来の日本を担う子どもたちのために、授 業学の確立と普及を行っている。
全国の教育委員会、日本私学教育研究所、東京・神奈川・兵庫などの私立中高協会や連合会を始め、各地の学校で研修や講演、コンサルティングを行うなど、活躍の幅を広げ5月よりオンライン講座も開講している。

▼『大矢 純』の過去記事を読む

【2022/4月】生徒に届く伝えかた

【2022/2・3 月】保護者対応の具体策

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