【大村 伸介】安心感の生まれる問いかけ

この号が皆様のお手元に届くころには、ゴールデンウィークが終わり、夏の訪れを感じる季節になっているかと思います。
例年この時期は、多数の学校や教育委員会主催で行われる教職員研修の打ち合わせに忙殺され、全国を文字通り飛び回っているのですが、そんな中でこんなお話をよく聞きます。

「新年度の滑り出しは良かったんですが…ゴールデンウィークを挟んで…すっかり元に戻ってしまったクラスが多くて…宿題忘れなんか顕著な例なんですが、一体何があったのか見当も付かず…困っている教員が多いんですよ」
なるほど、かなりお困りの様子です。

「生徒たちに何があったのか質問されたりしてますか?」
「もちろん…でもなかなか本音が引き出せていない感じですね」
お心当たりがある先生もいらっしゃるかと思います。
では、本音が引き出せないのは何があるんでしょう。

 

無意識の発話

このお話を研修内で取り上げました。
ご提供する研修は、カスタマイズしていますので、そういう観点では、研修前の打ち合わせは極めて重要ですし、同じ内容を扱うにしても切り口を変えて実施をしています。

閑話休題。
先生方にこんな質問をしてみました。
「ゴールデンウィークが明けて、宿題を忘れてくる生徒が増えていると校長先生から打ち合わせの時に聞きました。
例えば、3回連続で宿題を忘れてきた生徒がいたとしましょう。
どんな問いかけをされてますか?
ここ数週間のコミュニケーションを振り返ってできる限り書き出してみましょう」
そして、グループで普段どんな問いかけをしているか分かち合っていただきました。

「なぜ、宿題できないの?」
「どうして、もっと自分に厳しくなれないの?」
「そんなことで来年受験迎えてどうなると思う?」
この3パターンが最大公約数といったところでした。

「では、いまからお隣の先生に3つの質問をしてください。
質問された先生は何を感じたか分かち合いましょう」

その3つの質問とは…
「なぜ、生徒に寄り添えないんですか?」
「どうして、もっと自分のコミュニケーションを反省しないんですか?」
「そんなことで1年間、生徒を指導してどうなると思っているんですか?」
会場に爆笑の渦が生まれました。

「とてもそんなことは聞けないというわけですね。
ところが、いま示した問いかけは、先ほど先生方から出た、3回連続で宿題を忘れてきた生徒への問いかけとすべて同じ構造をしているんです」

苦笑いを伴った沈黙が会場を支配しました。
ここで日頃、無意識に行っている自分のコミュニケーションへの気づきが起こるわけです。

実はこれらの問いかけは、発話者にとっては質問でしょうが、詰問として相手に届いています。
普段は抵抗感なく生徒に対して質問のつもりで発していることが多いのです。
そして、無意識に発せられていることが特徴です。

1 2

大村 伸介(おおむら しんすけ)

株式会社成基総研 コーチング室 室長


集団指導塾を経て、2004年株式会社成基入社。

教室長、エリアマネージャー、本部長補佐、副本部長を歴任。

現在は、教育コーチング、パパママコーチングセミナーのトップ講師として教職員研修、保護者講演会等で全国を飛び回る。

日本青少年育成協会認定上級教育コーチ・認定A級トレーナー、主任研究員。

ohmura
▼『アクティブラーニング』の過去記事を読む

【2022/4月】安心感が生まれるメカニズム

【2022/2・3月】「抱えているもの」を受けとる面談を

   ≫さらに読む